【論文解説】ハーディ1908(ハーディ・ワインベルグの法則)

目的

Yule氏はメンデルの理論を批判し、
短指症が顕性遺伝子である場合
「時間が経つにつれて、その他の要因がなければ、正常な人々に対して三倍の短指症の人々が出現するだろう」と述べています。

しかし、これは数学的に正しくありません。
ハーディはこれを簡単な代数を用いた数学で示しました。

内容

Aaをメンデルの遺伝のペアとし、Aが顕性であるとします。
ある世代において、
顕性ホモ接合体(AA):ヘテロ接合体(Aa):潜性のホモ接合体(aa)=p、2q、r
の個体数である場合を考えます。

さらに、個体群が大きく、交配がランダムであるとし、3種の遺伝子型において性別が均等に分布し、すべての個体が同等の生殖能力を持っているとします。

次世代の個体数を計算すると
(p+q)2 : 2(p+q)(q+r) : (q+r)2 
= p1 : 2q1 : r1  となることが示せます。

この分布が前の世代と同じになる条件を考えます。
成立するための条件は q2 = pr  です。
p、q、rの値に関わらず、
q12 = p1r1 (∵{(p+q)(q+r)}2=(p+q)2(q+r)2) となり、
分布は二世代後も変化しないことが示されます。

具体例

Aが短指症で、純系の短指症者と純系の正常者が1:10,000の割合でいる場合、
p=1、q=0、r=10,000  となり

次世代の個体数は
p1=1、q1=0、r1=10,000  となります。

短指症が顕性の場合
第二世代での短指症者の割合は
20,001:100,120,001(p+2q:全体)、
実質的に2:10,000で、
初代の倍ですが、この割合はその後増加することはありません。

短指症が潜性の場合
第二世代での短指症者の割合は
1:100,020,001(p:全体)、
実質的に1:100,000,000となり、
この割合もその後減少することはありません。

結論と期待値からのズレ

まとめると顕性形質が人口全体に広がる傾向があるという考えや、顕性形質が消滅する傾向があるという考えには根拠がありません。

もちろん、理論的な比率からのわずかな逸脱が各世代で発生する影響についても少し触れるべきでしょう。
条件q12=p1r1を満たす分布p1:2q1:r1を「安定した分布」と呼びましょう。
実際には、第二世代で得られるのはp1:2q1:r1ではなく、わずかに異なる分布p1‘:2q1‘:r1‘であり、これは「安定的でない」といえるでしょう。
また,理論によれば、これは第三世代で安定した分布p2:2q2:r2をもたらすはずであり、これもp2‘:2q2‘:r2‘とわずかに異なります。
p1:2q1:r1という分布が「安定している」という意味は、偶発的な逸脱の影響を考慮しても、理論によれば、次の世代で元の分布とわずかに異なる新しい安定した分布が得られるということです。
もちろん、ここで考慮されているのは極めてシンプルな仮説のみです。
無作為な交配以外の仮説は異なる結果をもたらすでしょうし、性別に依存しない、または生殖能力に影響を与える特性の場合、問題はさらに複雑になる可能性があります。
しかし、Yule氏の発言が提起したシンプルな問題には関連がないようです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました